2003/10/10

秋雷


今回も福岡へ帰省しての釣行
息子の運動会の前日に鬼ヨメの制止を振り切って
いつもの相棒と某川への初釣行

これが後で大変なことになるとは
想像もつかなかったが・・・

いつものように夜中にカヌーを積んだ
ロールス号がピックに来る

ぐちゃぐちゃと話しながら5時ごろ現着
早速暗闇にカヌーを漕ぎ出す
とても静かでいい感じ
しかし、しばらく投げるものの

反応は無い

ま、いつものことだが、この一番美味しげな時間帯に
無反応とは・・・先が思いやられる

反応無いまま朝焼けを向かえ、どんどん上流へ進む
流れは比較的緩やかでパドリングも苦にならない
時折、激浅なサンドバーとかあったが
なんなくクリア

それにしてもいろいろ障害物とか攻めるもやはり

無反応・・

こりゃあかん・・と諦めかけたころロールスに爆発バイト!

ドカン!と出た

しかし、なんかニョロニョロしてるぞ?
案の定、バイトの犯人はこいつであった

食用がへるにて 良型の雷様 80くらいかな?

う〜む、雷様でもうらやましい
こんだけ反応が無いと何でもいいから釣りたい
(これが後で大変なことに・・・)

しかし、久しぶりの良型雷でフックを外すのも一苦労
カヌーの中で暴れる雷を押さえつけ、ドロドロになりながら
なんとかフックを外してリリース

この時点で今回持ってきた快適アイテムを使用することに

カセットコンロで
湯を沸かし
ワンタンや
ラーメンを作り
コーシーなんかも
飲んじゃうのである

なかなかにいい感じである

コーシーすすりながら プラグを見つめる

てなわけで、もう気分はまったり
つーかもう釣れる気がしなくなってきた

ロールスの事前情報では日中の反応がいいとのこと
しかし、このプライムタイムに反応無しとは
かなりやられちまっているのである

ここでふと携帯チャック

未読メール1件
「子供たちが起きる前には帰ってくること。
あなたは2児のパパなんだから自覚しなさい。
こんな気分にさせるのなら
ずっと横浜にいて下さい。」
妻からの
ラブラブメールである

起きる前つっても現在すでに7時くらい
即効帰っても9時過ぎることは目に見えている
つわけで、携帯の電源を静かに切り
何も見なかったことにする

(これが最悪の選択だったとわ!・・)

や、やべえ(汗)

何事も無かったかのようにキャストに集中
今回は自作のへんてこルアーと
夢の中で思い付いたフロッグの性能を試す

しかし、あまりにも反応無く、日も上がって
だいぶ暑くなってきたので諦めて帰ろうか
と思ったところ、シェードでかえるにバイト!

ちっこいけど(嬉)

フッキングも上々!
夢かえる、なかなかのデビューである

それからしばらくして再びシェードで
今度は自作ブッシュ対応羽物にバイト!

かな〜り引きますが・・・

えらいゴンゴン引くと思ったら
なんかニョロニョロしてる
やはり雷であった

痩せてるけど60くらい

実に20年ぶりくらいの雷である
魚雷持ちが良くわからないので
変な持ち方ではあるが
傷つけないようにソフトにリリース

それにしても落雷率の高いポイントである

それからは落雷に備えて絶縁ゴム製
「夢かえる」を投げ倒す

やはりかえるはいい!
何が良いって、着水音である
俺はろくにサミングしないので、着水音は
ほとんどの場合爆音であり、間違いなく魚を散らしている
その点、かえるの着水音は魚をおびき寄せる作用がある
(と思われる)
おまけにブッシュでも何でも躊躇せず突っ込める
(つか、俺オープンでも使うんだけど)

俺にとってかえるはダーターでも出ない時の
ヤバイ武器である
コレに匹敵するヤバイやつはPowerPackかな?
でも、あれは突っ込めないし

しかし万能かえるにも弱点がある
ご存知の通り極端にフッキングが悪い

それを克服する方法を夢の中で思いついたのである
それがこの
「夢リグ」

わかるかな〜?

この後もしばらく夢リグかえるを投げ倒す

ほれ、この通り 40up!

またしても夢リグに掛かっている
これはすんごいことを思いついたかもしれない
しばらく癖になりそうである
(特許出願中)

完全に太陽が上がってじりじり暑くなってきた
この日、九州は残暑が戻ってきたようで
せみも鳴きまくり、気温は30度近くまで上がった

と、ブッシュ対応羽物も大活躍
ただ引きよりも、着水点でパタパタしてたら
下から突き上げるようなバイト

ほ〜れ、また40up!

いや、なかなか今回の釣りは楽しい
普段は日が上がったらバイト無くなるものだが
ここは日が上がってからがいいのだ
ロールスの事前情報の通りであった

房総の野池でもこのような現象がよく見られる
水温の低い早朝よりも暖かい日中の方がいいのか、
朝うろうろしててストラクチャについてなく
シェードに入ってからのほうが狙いやすいからか
よくわからんが、こういうこともある

(この時点では、まさかこの後
悪夢
待ち構えていようとは思いもよらない)

それからしばらくして携帯の電源を入れてみる

未読メール1件
「あんた、今どこで何してんの??
ヨメちゃんがもう
離婚するって激怒してたよ!
いいかげんにしなさい!もう知らないよ!
今回はどうなってもフォローできんからね!」
母からの暖かい激励メールであった・・

激ヤバい!

すでに
組織の手が俺の親までのびてきた
いよいよ焦ってきた俺は
「そろそろ、帰ろうか・・」
と言い出すものの
バイトが出始めて面白くなってきたので
なかなか踏ん切りがつかない・・

うぅむ、よし、最後にこのシェードやってから帰ろう
と、いいながら、次々に現れる美味しげなシェードが
おれのハートを掴んで離さない

俺の心の中では
天使と悪魔が戦っていた

最後の最後、シェードにかえるを投げ込んだ時
なにやら巨大な物体がかえるの下にヌッと現れる
もしや・・・と思った瞬間

バフッ!

う、うぉっ!
ギューンと持っていくその魚体は明らかに雷様
アーティストが折れんばかりに曲がりまくっている

お、折れる〜〜!

先ほどまでのとは比較にならないぐらいの強烈な引きである
いっぱいに締めているはずのドラグが滑っていく

うぉ、明らかに80up!

もぁ〜んと上がってきた魚体は明らかに80up!
こりゃカヌーであげるのは大変だ!
しばらくの間やりとりし、なんとか手で掴むことに成功!

なんとかあごを掴む  お、重い!

これまた全魚種においても最長記録更新である
今まで中学生の時に釣った70くらいのズナマが最高記録
しかし、これで間違いなく最長記録更新
俺が今まで釣ったどの魚よりも長い

つーわけで、バスも釣れたんだけど、なんだか
雷ばかり釣ったようなイメージの釣行であった





それから・・・
(さぁ、皆さんハンケチのご用意を)




家に近づくにつれ、俺の額を冷たい汗が流れる

やばい!

心臓が口から出そうなくらいに激しく鼓動し
口の中は乾いてつばも出ない
手にはびっしょりと汗をかいていた
精神的にかなり追い詰められ、逃げ場が無い

レベルAの危険度である

多分家には入れないであろう
締め出されるのは既に経験済みであるが
今回はその時よりもかなりやばそうである

どうやって
誤魔化そうか・・・

などと無意味な策を練っている横で
ロールスは
能天気にアホウなことばかり言ってるが
そんな話はまったく
耳に入らない状況である
俺は
小刻みに震えるチワワ状態だった・・

家について、
じ、じゃ・・と別れる

心の中では
(独りにしないで!)
と叫んでいたかもしれない・・

それから
念のため玄関に向かう
この時点で2時半である
当初の帰着予定は12時
我が家ではこれだけでも立派な
犯罪が成立する

玄関のノブに手をかけようとしたまさにその時!

「ガチャ」

と内鍵の閉まる音

「ガチャガチャ」

ノブを回すが、当然開かない・・
どうやら、ヨメは俺が帰ってくるのを確認してから
厳戒態勢に入ったようだ

やむを得ず自宅前の公園で妻の機嫌が
よくなるのをじっと待つ(超悲観的願望)
しかしながら、ヨメの怒りがおさまり
家に入れてもらえる可能性は地底人が
発見される確立よりも低いであろう

しばらく考え、
駄目もとで妻にメールしてみる

「今日はごめん!いろいろあって遅くなっちゃったよ!
あはっ!
明日運動会だよね?なんか手伝うから入れてくれないかな?
なんなら長男と次男を連れて遊びに出ようか?」

努めて明るく、まるで
出会い系サイトのナンパメール
のような文章である

するとしばらくして妻からのメール
「私はそんなに
甘くありません!(怒)
実家にでも帰って下さい。
子供には
もう会わないで下さい。(きっぱり)」

俺の明るいメールに対して、
戦時中の赤紙のような
冷たいメールが飛んできた

背中から一刀で断ち切られたような気分になり
ぞくぞくと
寒気がし、唇がガタガタ震えてきた

それからしばらく携帯をいじったりして
ブランコでたたずんでいると
妻が二人の息子を連れて出てきた

俺はこれ以上にないくらいの
作り笑顔で迎えたが
一瞬妻の
真っ白い目が見えただけで
そのあまりにも恐ろしい形相に思わず目をそらしてしまった

そこで長男が俺に気付き

「あ!パパだ!パパ〜!!」

と俺に駆け寄ろうとした
が、その瞬間、般若と化した妻に
首根っこを掴まれ車に引き戻される長男

「アノ人をパパと呼んじゃダメ!
アノ人を見てもダメ!」


と言い聞かせる声が静かな住宅街に響いた

それから二人の子供は不安気な表情で、
車が角を曲がるまで、肩を落とした中年男を
じっと見つめていた
もちろんBGMは「ドナドナ」である

俺は車が小さくなっていくにつれ、
二人の子供達の悲し気な表情が
涙でにじみ、よく見えなくなった


ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪
(TOT)
あぁ、これが子供たちを見る
最後になるんかなぁ・・

「子供達よ最後まで悪いパパでごめんよ
もっといっぱい遊びに連れて行ったり
おもちゃを買ってあげればよかったな」

とかぼんやり考えていた・・・(号泣)

通りかかった人は俺がリストラされて
人生終わった人
あるいはちょっと頭がやられてて
幸せな人
そんな風に見えたかもしれない
ま、ある意味
その通りではある

それから数時間が経過した

夜になり、ブランコでうたた寝していたら
車が戻ってきた

また子供たちが俺を見つけ

「ねぇ!ママ!
パパをおうちに入れてあげようよ!
ねぇ、ママ!おねがい〜〜!!(泣)」


泣き叫ぶ声がご近所にこだまする

しかし、ヨメは二人の子供をまるで絞首刑の
13階段を登らせるかのように後ろからこづき
子供たちの訴えもむなしく、家の中に消えていった

俺は
肩を震わせながらまた号泣し
今までの子供たちとの楽しかった思い出が
走馬灯のように頭をよぎっていた

それからしばらくして玄関の前に立ち
念のためにドアノブを回すと

「ガチャリ」

ドアは素直に主を迎えてくれた

え?いいの?

安心したのもつかの間、それからは家の中で
たっぷりとヨメの刺すような視線と奴隷のような
仕打ちが無期懲役のように続くという
拷問が待ち受けていたのだ・・・



しかし、この釣行記を編集している現在
いまだメール以外でのコミュニケーション手段は
断絶された状態である


我が家の国交正常化は
北朝鮮よりもやっかい
のようだ


今回の釣行記は川でも家でも雷だらけ
という
オチであった






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